【保存版】畜産・食品メーカー向け大型補助金「畜産クラスター事業」徹底解説

~「地域連携」で勝ち取る設備投資支援。金額目安と計算ロジックを完全網羅~
飼料価格の高騰や資材コストの上昇、労働力不足など、畜産・酪農および関連食品産業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。こうした中、生産基盤の強化と収益性の向上を目指す事業者を強力にバックアップするのが、国の大型対策「畜産・酪農収益力強化総合対策基金等事業」です。
本コラムでは、畜産農家はもちろん、地域の畜産物を活用する食品メーカー(ハム・ソーセージ製造、乳業メーカー等)も活用可能な本事業について、仕組みから「具体的な補助金額の目安」までを網羅して解説します。
1. 制度の仕組み:「単独」ではなく「チーム」で申請
この事業の最大の特徴は、個々の企業が単独で申請するのではなく、地域一体となって収益向上を目指す「畜産クラスター」という枠組みで行う点です。
- 畜産クラスター協議会: 畜産農家だけでなく、乳業者、食肉加工業者、TMRセンター(飼料生産組織)、自治体などが連携して設立する協議会です。
- 中心的な経営体: 協議会が策定する計画に基づき、実際に収益力向上に取り組み、補助金の交付対象となる事業者です。
つまり、食品メーカーであっても、地域の生産者と連携し、地域の収益性向上(高付加価値化や販路拡大など)に貢献する「中心的な経営体」として位置づけられれば、支援の対象となります。
2. 支援メニューと「金額・補助率」の目安
補助率は原則として事業費の「1/2以内」ですが、青天井に半額が出るわけではありません。施設(建物)には「基準事業費(上限単価)」が、機械には「上限額」が設定されています。
① 施設整備事業:工場の建築・改修など
畜産物の加工施設、畜舎、堆肥舎などの建設・改修を支援します。
- 補助率: 事業費の 1/2以内
- 補助金要望額の上限: 1事業主体あたり単年度 5億円
- 【重要】建築費の計算ルール(基準事業費)
補助対象となる建築費には、国が定める「1㎡あたりの単価上限(基準事業費)」があります。これを超えた分は全額自己負担となります。
▼ 施設整備の基準事業費(1㎡あたり単価上限)
| 施設の種類 | 基準事業費(通常) | 特認事業費(条件付) |
|---|---|---|
| 畜産物加工施設 | 79,000円 | 102,000円 |
| 肉用牛舎 | 48,000円 | 62,000円 |
| 乳用牛舎(成牛) | 80,000円 | 104,000円 |
| 乳用牛舎(育成) | 83,000円 | 107,000円 |
| 豚舎 | 69,000円 | 89,000円 |
| 鶏舎(ウインドレス) | 68,000円 | 88,000円 |
| 堆肥舎(500㎡未満) | 71,000円 | 92,000円 |
| バンカーサイロ | 10,000円(/㎥) | 13,000円(/㎥) |
※「特認事業費」は、地域の実情(資材高騰等)により基準額での建設が困難と認められた場合に適用されます。
【試算例:1,000㎡の加工施設を建設する場合】
- 国の基準額(通常):1,000㎡ × 79,000円 = 7,900万円
- 補助金上限:7,900万円 × 1/2 = 3,950万円
- 実際の見積額が 1億5,000万円 だった場合:
- 自己負担額 = 1億5,000万円 − 3,950万円 = 1億1,050万円
※昨今の建築費高騰を鑑みると、実質的な補助率は見積総額の3〜4割程度になるケースも想定しておく必要があります。
② 機械導入事業:加工機械やトラクターなど
生産コスト低減や高付加価値化に必要な機械装置の「購入」または「リース」を支援します。
- 補助率: 事業費の 1/2以内
- 対象機械: 食肉・乳製品加工機械、トラクター、ベーラー、衛生管理機器など。
- 要件: リース導入の場合、原則として法定耐用年数以上の貸付期間設定が必要です(所有権移転型等は特例あり)。
③ ICT化等機械装置等導入事業:スマート農業・労働負担軽減
労働時間の 10%以上削減 を目標とするスマート機器等の導入を支援します。
▼ ICT機械導入の上限額(スマート農業枠)
| 導入形態 | 補助上限額(1経営体あたり) |
|---|---|
| 機械装置のみ導入 | 3,000万円 |
| 施設整備と一体的に実施 | 5,000万円 |
※補助率は事業費の1/2以内です。
④ 家畜導入(購入補助)
増頭や施設整備と一体的に家畜を導入する場合、購入費の1/2が補助されますが、以下の頭数単価上限があります。
▼ 家畜導入の補助上限額(1頭あたり)
| 家畜の種類 | 補助上限額 |
|---|---|
| 妊娠牛 | 27.5万円 |
| 乳用・肉用牛(繁殖雌牛) | 17.5万円 |
| 繁殖雌豚 | 4.0万円 |
※購入費の1/2以内かつ、上記単価が上限となります。
⑤ その他の奨励金(定額支給)
設備投資とは別に、成果目標の達成や特定の取り組みに対して定額で支払われるメニューです。
- 肉用牛の増頭奨励金: 繁殖雌牛1頭増頭につき 17.5万円〜24.6万円(経営規模による)。
- 乳用牛の増頭奨励金: 乳用初妊牛1頭増頭につき 27.5万円以内。
- 事業承継支援: 後継者不在の農場を継承する場合の登記費用等に対し、定額 100万円以内。
3. 自社に合う「優先枠」を見つけよう
国の政策課題に対応した取組には、優先的に採択・配分される「優先枠」が設けられています。
- 飼料増産優先枠: 国産飼料(子実用トウモロコシ等)の利用拡大に取り組む場合。飼料自給率向上の目標設定が必要です。
- 輸出拡大優先枠: 輸出事業者と連携し、HACCP対応など輸出に向けた生産余力を創出する取組。
- 省エネ優先枠: ヒートポンプやインバーター制御装置など、エネルギー使用量を5%以上削減する機器の導入。
- 中山間地域優先枠: 中山間地域等において、放牧や耕畜連携、高付加価値化に取り組む小規模な施設整備(総事業費2億円以下)などが対象。
- 新規就農優先枠: 新規就農者の初期投資負担を軽減するための施設整備(上限2億円)や家畜導入支援。
4. 申請に向けたステップ
この補助金を活用するためには、「地域との合意形成」が不可欠です。
- 協議会への参画: 地域の「畜産クラスター協議会」(事務局は自治体や農協などが担うことが多い)に相談し、メンバーとして参画します。
- 実質化された計画の策定: 自社の取組(加工場の建設や機械導入)が、地域の収益性向上にどう貢献するかを明確にし、「畜産クラスター計画」に位置づけてもらいます。
- 事業実施計画の提出: 導入したい施設や機械の詳細(見積もり、カタログ等)を詰め、協議会を通じて計画を提出します。
まとめ
「畜産・酪農収益力強化総合対策基金等事業」は、単なる設備投資の補助ではなく、「地域ぐるみで儲かる畜産・食品産業を作る」ためのプロジェクトです。 建設費や機械代の約3〜5割(基準額ベースで1/2)を国が支援するこの制度は、攻めの経営転換を図る絶好のチャンスと言えます。
まずは、都道府県の畜産担当部署や、お近くの農協(畜産クラスター協議会事務局)へ、「具体的な事業計画」と「見積もり」を持ってご相談されることをお勧めします。
※本コラムの金額や要件は、2025年3月時点の公開情報(令和6年度補正予算および令和7年度当初予算案等に関連する要綱・要領)に基づいています。資材価格の変動等により基準単価が改定される可能性があるため、申請時には必ず最新の公募要領をご確認ください。
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✍️ この記事を書いた人
北條竜太郎|株式会社アカネサス 代表取締役
老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、
食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。
補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。
【会社実績】
・支援プロジェクト総事業費:363億円
・補助金採択額:126.5億円
・北海道から沖縄まで全国対応
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