【基礎講座】「畜産クラスター」とは何か? 作り方と申請の仕組みを完全解説

~「個」ではなく「地域」で稼ぐ。大型補助金獲得の必須要件~
畜産業界で頻繁に耳にする「畜産クラスター」という言葉。これは単なる補助金の名称ではなく、国が推進する「地域一体となって収益力を高めるための仕組み」そのものを指します。 本コラムでは、補助金活用の大前提となる「畜産クラスター」の定義と、実際にどうやってその体制を作るのか、ステップごとに解説します。
1. そもそも「畜産クラスター」とは?
「クラスター(Cluster)」とは「房(ふさ)」や「集団」を意味する言葉です。 畜産クラスターとは、畜産農家が単独で頑張るのではなく、地域に関わる関係者が「チーム(集団)」を組み、地域全体で収益性の向上を目指す体制のことです。
この体制は、以下の3つの要素で構成されています。
① 畜産クラスター協議会(=チーム)
地域の関係者が集まって結成する組織です。
- メンバー: 畜産農家だけでなく、地方公共団体(市町村・県)、農協(JA)、畜産関連事業者(乳業メーカー、食肉加工業者、飼料会社など)、コントラクター(作業受託組織)などが参画します。
- 役割: 地域の課題を共有し、解決策を話し合います。
② 畜産クラスター計画(=作戦書)
協議会が策定する、地域の収益向上に向けた具体的な計画書です。
- 内容: 「地域の現状」と「数年後の目標(売上増、コスト削減等)」、それを達成するために「誰が何をするか(施設整備、機械導入など)」を記載します。
- 重要性: この計画が都道府県知事に認定されることが、補助金を受けるための絶対条件となります。
③ 中心的な経営体(=実行部隊)
計画に基づいて実際に施設整備や機械導入を行い、収益向上に取り組む主体(農家や法人)のことです。
- 要件: 自らの経営改善に取り組むだけでなく、地域への貢献意思を持ち、他の関係者と連携することが求められます。
2. なぜ「クラスター」を作るのか?
TPPやEPAなどの貿易協定により国際競争が激化する中、個々の農家の努力だけでは解決できない課題(飼料高騰、労働力不足、物流コスト増など)が増えています。 これに対し、国は「地域ぐるみでの収益力強化」を支援の条件としました。
メリット:
- クラスター計画に位置づけられることで、最大5億円(事業費の1/2)規模の施設整備補助金や、機械導入補助金の申請資格が得られます。
- 食品メーカーやJAと連携することで、販路の確保やブランド化、コスト削減が進めやすくなります。
3. 畜産クラスターの「作り方」 3ステップ
実際にクラスターを組成し、計画を認定してもらうまでの手順は以下の通りです。
ステップ1:チーム結成(協議会の設立・参画)
まずは、地域の関係者を巻き込んで「畜産クラスター協議会」を組織します。
- 実務: 多くの場合、市町村の農政担当部署や地域の農協(JA)が事務局機能を担います。
- 企業の場合: 食品メーカー等が参画したい場合は、自社だけで協議会を作るのではなく、既存の地域の協議会(事務局は市町村やJAであることが多い)に参加するのが一般的かつスムーズです。
- 要件: 畜産農家以外に、2者以上の異なる役割を担う者(自治体、メーカー、コントラクター等)が参画している必要があります。
ステップ2:作戦立案(畜産クラスター計画の策定)
協議会メンバーで話し合い、「畜産クラスター計画」を作成します。
定めるべき目標:
ただ「施設が欲しい」では認められません。事業実施の翌年度から5年以内に、以下のいずれかを達成する数値目標が必要です。
- 単位頭数あたりの販売額 10%以上 増加(大規模経営は15%)
- 生産コスト 10%以上 削減(同15%)
- 農業所得または営業利益 10%以上 増加(同15%)
- 記載内容: 地域の現状、将来の目標、具体的な行動計画(誰がいつ牛舎を建てるか、加工場を整備するか等)を明記します。
ステップ3:認定と申請
作成した計画を公的なものにします。
- 提出: 計画書を市町村経由で都道府県知事に提出します。
- 認定: 都道府県が内容を審査し、地域の計画として適当であれば「認定」されます。
- 補助金申請: 計画が認定されて初めて、具体的な施設整備(加工場、畜舎等)や機械導入の補助金申請(事業実施計画の提出)が可能になります。
まとめ:最初の一歩は「相談」から
畜産クラスターは、書類上の手続きだけでなく、実質的な「地域連携の合意形成」が求められる制度です。 「新しい加工場を作りたい」「牛舎を建て替えたい」と考えた場合、まずは単独で動くのではなく、以下の窓口へ相談し、地域のクラスター計画に自社の取り組みを位置づけてもらうことから始めてください。
- 相談先: 建設予定地の市町村農政課、または管轄の農協(JA)
- 伝えること: 「畜産クラスター事業を活用したいので、地域の協議会に参加・連携させてほしい」
地域全体を巻き込んだ計画を作ることで、国の強力な支援を引き出し、持続可能な収益基盤を築きましょう。
※本コラムは2025年3月時点の公開情報(畜産・酪農収益力強化総合対策基金等事業補助金交付等要綱・実施要領等)に基づいています。詳細な要件は都道府県や協議会事務局へご確認ください。
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✍️ この記事を書いた人
北條竜太郎|株式会社アカネサス 代表取締役
老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、
食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。
補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。
【会社実績】
・支援プロジェクト総事業費:363億円
・補助金採択額:126.5億円
・北海道から沖縄まで全国対応
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